ヘミングウェイの家と、指の多い猫たち
アメリカ・フロリダ州の南の端にある島、キーウェスト。『老人と海』の作家ヘミングウェイが暮らした家が、今は博物館になっています。
この家には、今も60匹ほどの猫が住んでいます。そして、その半分ほどが、前足の指が6本や7本ある猫です。
白い猫の言い伝え
1931年、ヘミングウェイと妻のポーリーンは、この家に住みはじめました。家は、妻のおじさんが買って、ふたりに贈ったものです。
博物館によると、ヘミングウェイはある日、知り合いの船長から、指が6本ある白い猫をもらいました。名前はスノーホワイト。今いる猫たちは、その子孫だといいます。
指が多いのは、遺伝
指が多いのは、遺伝によるものです。親のどちらか一方から遺伝子を受けつぐだけで、指が多くなります。北アメリカで見つかったこの遺伝子の変化には、「ヘミングウェイ型」という名前までついています。
昔の船乗りは、指の多い猫を「縁起がいい」「ネズミ取りがうまい」と好んだとも言われます。
猫の名前は有名人
ここの猫たちには、有名人の名前がつけられています。チャーリー・チャップリンという猫もいました。名前は職員の投票で決めるそうです。
本当に飼っていたの?
ところが、この言い伝えには、疑問の声もあります。息子のパトリックは「父はキーウェストで猫を飼っていなかった」と話した、とも伝えられているのです。
ただ、ヘミングウェイが猫好きだったのは確かです。のちに移り住んだキューバの家では、多いときで50匹以上の猫と暮らしました。1943年の手紙には、猫に「ウイスキーとミルクを一緒に飲むように教えた」と、楽しそうに書いています。
ちなみに、ヘミングウェイの名言としてよく紹介される「猫は気持ちにまったくうそがない」という言葉は、本人の文章には見つかっていません。弟の回想録に「兄がそう言っていた」と出てくる言葉です。
嵐の日も
2017年、大きなハリケーン「イルマ」が島をおそいました。職員10人は避難せず、54匹の猫と一緒に家に残りました。猫を集めはじめると、自分から家の中へ走りこんでくる猫もいたそうです。
厚い石の壁の家は嵐にたえ、猫も人も、全員無事でした。
今の暮らし
今、猫たちは家も庭も自由に歩き回り、12人ほどの職員が世話をしています。「座らないでください」と書かれた家具の上で、昼寝をしている猫もいます。
猫たちは毎週、獣医さんに診てもらっています。ほとんどの猫は避妊・去勢手術を受けていて、血筋をつなぐために、子どもを産むのは年に1組だけです。
庭には、ヘミングウェイが通ったバーの小便器を使った、猫の水飲み場があるといわれます。そして、猫たちのお墓もあり、1匹ずつ名前を刻んだ札が並んでいます。
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出典
- Ernest Hemingway Home & Museum「Our Cats」
- Ernest Hemingway Home & Museum「His Life」
- Garden & Gun「Hemingway's Six-Toed Cats Are Thriving」(2024年)
- アメリカ連邦第11巡回区控訴裁判所 判決文(2012年)
- Live Science「Hemingway Home Cats」(AP、2006年)
- Langford Vets(ブリストル大学)「Polydactyly」
- OMIA「Preaxial polydactyly in cats」
- Wikipedia(英語版)「Polydactyl cat」
- Mental Floss「Facts About Hemingway's Cats」
- Smithsonian Magazine「Ernest Hemingway Taught One of His Many, Many Cats to Drink Whisky」
- PBS「Hemingway Adventure: Cuba」
- Quote Investigator(名言の出どころ)
- Fox News(ハリケーン・イルマ、2017年)
- WSVN(ハリケーン・イルマ、2017年)
- Grunge(猫の水飲み場)
英語の資料の言葉は、わかりやすい日本語に直しています。写真は、ヘミングウェイがアメリカでパブリックドメインの写真、家が Andreas Lamecker(CC BY 2.5)、猫が Marc Averette(CC BY 3.0)のものです。家と猫の写真は、大きさを変え、一部を切り抜いて使っています。