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大谷翔平と、デコピン

2023年11月。大谷翔平選手が2回目のMVPを受賞した瞬間、世界中の野球ファンの目は、大谷選手の隣に座っていた1匹の犬にくぎづけになりました。

ドジャースのユニフォームでバットをかまえる大谷翔平選手
大谷翔平選手(2025年3月、東京ドーム)

ハイタッチで世界デビュー

MVPの発表は、テレビの生中継で行われました。大谷選手の隣には、茶色と白の毛の犬がちょこんと座っていました。おやつをもらい、頭をなでてもらい、受賞が決まると、大谷選手とハイタッチ。

「あの犬の名前は?」。ファンのあいだで、たちまち話題になりました。

名前は「デコピン」

名前がわかったのは、翌月。大谷選手がドジャースに入ったときの記者会見でした。記者に聞かれて、大谷選手は「デコピンっていうんですけど」と答えます。日本のSNSでは、「デコピン」という言葉が大きな話題になりました。

デコピンには、もともと「デコイ」という名前がありました。大谷選手は、それに近い日本語の名前として「デコピン」を選んだそうです。アメリカでは、呼びやすい「デコイ」で紹介しています。

大谷選手は、前から犬を飼いたいと思っていました。デコピンを迎えたと電話で伝えたとき、のちに奥さんになる真美子さんは、びっくりしていたそうです。

2024年、大谷選手は結婚を発表します。その文章には、こう書かれていました。

2人(1匹も)で力を合わせ支え合い……

デコピンも、家族の一員でした。

3週間の練習

2024年8月28日、ドジャースタジアム。この日は、デコピンが「始球式」をする日でした。

大谷選手がボールをマウンドに置き、キャッチャーの場所へ移って合図をします。デコピンはボールをくわえて、まっすぐ走り、大谷選手に届けました。最後は、大谷選手の手とデコピンの前足でハイタッチ。5万人をこえるお客さんから、大きな拍手がわきました。

この日のために、3週間ほど練習したそうです。大谷選手は「デコピンより、僕のほうが緊張していました」と笑っていました。

そしてその試合、大谷選手は最初の打席で、いきなりホームランを打ちました。

ソファから逃げた年、がんばった年

MVPの発表のたびに、デコピンは大谷選手の隣にいます。

2024年は、真美子さんとソファに座っていましたが、受賞が決まった直後に、ソファからぴょんと飛び降りて、どこかへ行ってしまいました。

2025年は、何度か逃げようとしながらも、最後までがんばりました。司会者から「デコイもよくがんばったね」とほめられ、大谷選手は、ごほうびを約束していました。

2026年1月には、野球の記者たちから、デコピンに「MVD(いちばん価値ある犬)」の盾が贈られています。こんな賞は、初めてのことでした。

めずらしい犬種

デコピンは、オランダ生まれの「コーイケルホンディエ」という犬種です。昔オランダで、ふさふさのしっぽを振ってカモを引き寄せる「おとり」の仕事をしていた犬でした。英語の「デコイ」も、「おとり」という意味です。

茶色と白の毛のコーイケルホンディエがこちらを見て座っている
デコピンではありませんが、同じコーイケルホンディエです

日本で1年間に登録されるコーイケルホンディエは、100〜200頭ほど。とてもめずらしい犬です。大谷選手は、デコピンのおかげでこの犬種が少しでも知られて、仲間が増えたらうれしい、と話しています。

ただ、日本のあるブリーダーは、ホームページにこう書いています。「大谷翔平選手が飼っているという理由で、コーイケルホンディエを飼いたい方にはお譲りできかねます」。有名だからではなく、その犬に合った暮らしができるかどうか。犬を迎えるときに、いちばん大切なことです。

デコピンの絵本

2026年、大谷選手は、デコピンが主人公の絵本を書きました。日本語版のタイトルは『デコピンのとくべつないちにち』。本当にあった始球式をもとにしたお話です。大谷選手は、自分の受け取るお金をすべて寄付しています。

絵本『デコピンのとくべつないちにち』の表紙
『デコピンのとくべつないちにち』(ポプラ社、2026年)

大谷選手は、絵本についてこう話しています。

デコピンは数多くの大切な時間を、僕のそばで過ごしてくれています。……動物愛護団体への支援により、より多くの犬が愛する家庭を見つけることを望んでいます。

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